どうなる医療分野のIT化
第4回 (08/2/26)
書類の記述など課題明らかに
医療機器や病名などの用語およびコードの標準化が進む中で、医療分野のIT化に関連する様々な課題も浮かび上がっているようだ。医療情報システム開発センター(MEDIC-DC)は、「徐々に標準化マスターを利用する医療施設が増えている」ことも事実だが、項目は「一般的なものしかいまのところ網羅できていない」というが、これは標準化作業が進んでいけば解決の糸口が見つかるものだ。
文書記述なども課題に
病名の統一もその時々で変化していく。「時代の要請によって病名の呼び名が変わったものはマスターに反映し、病気の考え方も変化していくので簡単に追加するわけにはいかない」という。従来から使用していたものを標準化コードに変換していくことも「大変な作業が出てくるだろう」と予想している。
また、医療分野で用いられる各種の書類の電子化、書類の記述形式や要件定義なども標準化していかないと、データだけ統一されても、文書の記述方法などが千差万別では片手落ちとなる。それも医療機関間だけでなく保健・医療・福祉、事業者間といった違う分野での標準化促進が欠かせない。例えば電子カルテの場合は入力するのが医師で、それぞれ診療科によって独自の記入方法を持っているために「どこまで標準化できるかは未知数」のようだ。
請求処理の分野は電子化が進むだろうし、患者情報もデータベース化して情報共有できるようになる。標準コードを採用してシステムの扱うデータが統一され病院間のシステム連携が可能になったとしても、「電子カルテはベンダーごとにユーザーインターフェースが違っていることから、今度は端末を扱う医師の使い勝手という点で困ることがでてくる」という。
実証実験で広域医療を
もう1つ標準化の恩恵がある。それは病院のシステム化でベンダー依存度が下がるという点だ。従来は一度システムが構築されると構築を担当したITベンダーが長く携わることになる。
これを別のベンダーがリプレースすると既存のシステムを捨てなければいけない場合も出てくるため、「先進医療システムへの移行が遅れる可能性やコスト高になる可能性も見逃せない」のだ。これなどはIT側の標準化、オープン化もからんでくる。
MEDIS-DCは、経済産業省が実施している「地域医療情報連携システムの標準化及び実証事業」を支援している。周産期医療を対象とした地域医療情報の連携システムの構築と実証を行うもので、電子カルテネットワークとモバイル端末を使った在宅管理システムをつないだ医療機関と在宅をネットワーク化したプロジェクトだ。現在、岩手県、千葉県、東京都、香川県の4地域で実証実験中で、将来は4地域連携、全国ネットワークへとつながっていく。
一方で、MEDS-DCは医療分野のセキュリティ対策を推進するためにプライバシーマーク(PM)制度の認証局として活動している。対象となる事業者は、病院や診療所のほかに調剤薬局、検査センター、社会福祉施設、在宅福祉サービス、その他保険・医療に関連する事業者で、現在は259事業者がPM制度の認定を取得するなど、個人情報保護への動きも活性化している。
(第4回終了)
第5回 「個別推進がもたらす弊害多く」に続く