どうなる医療分野のIT化

第2回 (08/2/26)

個別導入でIT化に温度差も

  医療分野でIT化が進んでいるが診療科ごとの個別導入を行っている病院が多いといわれている。さらに「病院内でも医局や医師の考え方などの違いで導入に温度差があるのは事実」とある大手メーカーの担当者はいう。

 実際の進展具合に疑問

 部門最適でIT化が進んでいる病院だが、どの程度なのだろうか。昨年12月に医療情報システム開発センターが実施した「医療情報システム化に関する調査」をもとに探ってみる。対象となった病院数は9千施設で回答数は1244施設だった。
  病院が取り組んでいることや機能を客観的に評価して改善を促す第三者評価方法として「病院機能評価」があるが、「取得している」病院が48.6%あり、機能評価は浸透しつつあることが分かる。認定機関の日本病院機能評価機構が認定した数は、今年10月1日現在で2399病院となり全病院数の27.0%となっている。
  ところが、品質マネージメントシステムのISO9000取得は5.2%しかなく、個人情報を保護するためのプライバシーマーク取得はさらに下がって1.0%だ。IT化・ネットワーク化が進むと患者の診断情報などがデジタル化され、セキュリティ対策を十分に施さないと漏えいの危険性が高まる。第三者が客観的に評価できる仕組みを導入しているかいないかで、患者の情報保護に対する安心感は大きく違う。
  一方、医療情報システムの進展具合を見ている。調査項目は「電子カルテシステム」「オーダリングシステム」「レセプト電算システム」「放射線情報システム」「画像管理システム」だ。ほかにはシステム化での課題や推進体制などが対象にあがっている。

 進みの遅い電子カルテ

 医療報酬の請求事務などの効率化に貢献する「レセプト電算システム」は、「運用中」が34.8%に当たる433施設、「構築中」は16.3%の203施設という回答が返っている。合せると51.1%と半数以上が手掛けているのだ。ちなみに「検討中」は39.1%の486施設で、これで全体の9割がレセプト電算システムの恩恵を被ることになる。
  一方、IT化の“目玉”ともいえる「電子カルテシステム」は、「運用中」が23.0%、「構築中」は5.1%、「検討中」でも29.9%。「導入予定なし」は41.8%の520施設が回答した。その理由を尋ねたところ、「導入したいが費用がかかる」199施設、「導入には時期尚早」が198施設となり、経営環境の苦しい病院の切実な声が聞こえる。
  検査や処方に関する情報伝達システムとなる「オーダリングシステム」は、「運用中」が48.5%の603施設で、「構築中」4.5%、「検討中」22.0%と導入が進みつつある。
  まだIT化は途上だが、そうしたシステムは院内だけでなく地域医療や広域医療といった患者主導を支援する道具になっていく。そのためにはデータやシステムがスムーズに連携する仕組み作りが欠かせないのだが。

(第2回終了)

第3回 「用語やコードの標準化が進む」に続く

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