06 6/13 

輝けITベンチャー


第1回
潟Nァンタムネットワークス
 アナログ電話とWebを効果的に融合

 近々、個人が固定電話と携帯電話を同じ電話番号で使い分けられるFMC(Fixed‐Mobile Convergence)サービスが始まるといわれているが、掛ける側と受ける側に同じ電話番号が表示されるという通話サービスがあることをご存知だろうか。
小関繁社長

 サービスを提供するのは、ネットワーク系のベンチャー、クァンタムネットワークスだ。双方に同じ番号を表示するのはあくまで個人情報を秘匿することが目的で、サービスを導入した企業は付加価値を付けたB−Cの無料通話サービスなどをユーザーに提供できる。発信手段も、アプリケーションやインターネット、メール、QRコードなど幅広く指定できる。

 自社プロダクトの開発で飛躍へ

 設立当初は、企業のネットワークシステム構築のコンサルティングを中心に事業を展開していたが、手掛けた案件の中でSIPベースの通信呼制御エンジン「VAS(Virtual Agent System)」を自社開発した。自社プロダクトを抱えたことにより、ネットエイジキャピタルパートナーズから出資を仰いで業容を拡大し、現在はプロダクトベースのサービスに注力している。冒頭のサービスはVASが実現するものだ。

 「VASはVoIPとアナログ電話を橋渡しする技術です」と小関繁社長は説明する。電話を掛ける側は、パソコンや携帯電話などのクライアント端末でWeb電話帳(データベース)から通話相手を選択し、ワンクリックでVASサーバーにアクセスする。ユーザーIDとパスワードを入力してログインすると、自分と相手の本来の電話番号にVASサーバーが代理で電話を掛け、通話が成立するという仕組みだ。この際に、発着番号の両方でVASに登録した代理の電話番号が使用され、発信側と着信側を登録するためになりすまし電話は不可能だ。ダイアリング操作がなく、携帯電話やパソコンに番号履歴も残らないため、高い個人情報漏えい防止効果が期待できる。
 フュージョン・コミュニケーションズと提携し、同社のネットワークインフラの上でASPサービスを提供しているため、社内のネットワークインフラに手を加えなくてもアプリケーションサーバーを導入するだけでサービスを利用可能だ。

 これまでの導入事例の1つに、ユーザー宅に出向いてパソコンのカスタマーサービスを行う派遣事業者の例がある。ユーザーには連絡用の1つの窓口番号を提示しておき、あらかじめサーバーに登録してあるエンドユーザーおよびスタッフの電話番号や履歴などの情報を利用して、オペレーターを通さずにユーザーからのコールを直接担当者に振り分けるシステムを構築している。オペレーター業務を電子化したことで人員の再配置による業務生産性向上と、ユーザーに対するレスポンスの向上を実現している。

 セキュアなリモートアクセスツール「UdiAS」

 2つ目のプロダクトは、リモートアクセスツールの「UdiAS(Undistributed Information Access System)」だ。
 UdiASの通信システムは、電話のようにユーザーの接続要求に対して当該のアプリケーションがリクエストに応じてセッションを張る仕組みだ。セッション確立後にファイアーウォールの内側からUdiASセッションをピンポイントで確立するため、セキュアなリモートアクセスを確保できる。
 さらにデータの保存や印刷はできないため情報漏えい対策は万全だ。最大300ユーザーが利用可能で、遠隔多地点会議システムや社外からの仮想シンクライアントシステム、リモートサポートなどに利用できる。
 UdiASを利用した実案件としては、某オンライントレードサイトのサービスの一環として、顧客のPCを遠隔から操作しビジュアル的に指示できるという仕組みを現在構築している。この際に、ユーザーから「サービス提供側のリスクヘッジとして、遠隔から約定ボタンは押せないようにしたい」という要望があった。人的なオペレーションによる制御ではミスが発生し得るが、UdiASは「通信プロトコル上でオペレーションを制御できる独自の技術」を採用しているため、難なく問題をクリアできたという。

 「夢は海外で認められること」(小関社長)

 小関社長はかつて米国の某大手通信ベンダー日本法人のSEだった。「海外ベンダーのチューニングエンジニアでいるよりも、どうせなら自分で開発したものを売りたい」と独立した。同社のビジネスには通信キャリア、IP、SIの専門知識を要するため、なかなか人材が集らないなどの悩みを抱えてはいるが、「最終的には日本で作った我々のソリューションを海外に持っていくのが目的です。家電やゲームだけでなく、ソフトやシステムでもMade in Japanブランドを作りたい」と飛躍を誓っている。

≪企業データ≫
潟Nァンタムネットワークス
2003年1月設立
資本金1億400万円
代表取締役社長 小関繁(こせきしげる)
東京都港区西新橋2‐34‐7第一三須ビル 6階
http://www.quantum-networks.co.jp/index.html