組込み面スタート記念インタビュー

 自動車をはじめとした製造業の好況を受け、組込みシステム業界が勢いづいている。そこで、弊紙でも毎月最終週に組込みシステム・ソフト面を今年からスタートした。第1回を記念して、中核団体として20年以上活動を続けている組込みシステム技術協会(JASA)の松尾隆徳会長(東洋電機会長)に、業界の現状などについて話を伺った。

2008 1/28

「ようやく産業が認知されて感慨深いものがありますね」〜組込みシステム技術協会(JASA) 松尾隆徳会長〜
松尾隆徳会長
松尾隆徳会長
 

――組込みシステムに対する注目度が急速に高まったように感じますが。

 
松尾 私の感じているところでは、一昨年あたりから盛り上がりの兆しがあり、昨年はっきりと需要が顕在化したものと捉えております。実際にJASAの会員企業数も増加傾向にあり、昨年だけでも38社の新規入会があった程です。かつては「組込み」という言葉自体もなく、我々自身も「マイコン応用システム」などと言っていた時期もありましたが、今は組込みという言葉をこちら側で説明しなくても、我々の仕事の内容を皆様に理解していただけたけるようになりました。市場に関しましては、産業用・民生用とあらゆるところでコンピューターの使われ方が一般化して組込みシステムの分野がどんどん広まり、それとともにビジネスチャンスも大きくなったという状況です。


――重要産業としてようやく認知されたという訳ですね。

 
松尾 国も、組込みシステム・ソフトウェアを全国各地で中小企業を中心とする新しい産業の育成および国内経済を発展させるための切り札として位置付けており、各地で組込み関連産業が拡大しています。さらに、産業分類コードに新たに「組込みソフトウェア」が設定されまして、今年の4月から組込みソフトウェア業が1つの新しい業種としてスタートします。協会設立20年にしてようやく産業が認知されて感慨深いものがありますが、同時に我々自らがよって立つ足場をしっかりと固め、より組込みの分野を拡大するという使命を負ったと考えております。
 

――現在の組込み業界における問題点とそれに対するJASAの取組みを教えてください。

 
松尾 当面の最重要課題は、人材育成の問題でしょう。需要の拡大に伴い、当業界ではこれから新しい人材を確保すると共に現在の技術者を再教育してレベルを高めていく必要があります。そこで組込みスキル標準(ETSS)と準拠する形で人材育成を効果的に行っていく計画です。これまでも他団体と連携をしながら各地で人材育成のためのセミナーを実施していますが、併せて評価制度としてJASAが開始した「組込み技術者試験制度(ETEC)」の普及にも注力していきます。ETECは今年中に上位のクラス1の試験を開始し、改訂される情報処理技術者試験とも連携を取っていく予定です。これらの取組みは、直接我々だけでなく世の中にも市場のお客様にもメリットをもたらすはずです。また、業界振興策として「エンベデッドテクノロジー(ET)展」を横浜と大阪の2カ所で開催していますが、第3の開催候補地選びをそろそろ始める予定で、今年もいい意味で忙しい1年になりそうです。


【団体データ】
組込みシステム技術協会
http://www.jasa.or.jp/top/

東洋電機
http://www.toyo-elec.co.jp/