ET2009の見どころを紹介 〜ものづくりの手法が変わる組込みの今を感じて欲しい
山田敏行ET実行委員長に聞く
09 11/10
今年から組込みシステム技術協会(JASA)のET実行委員長に、横河ディジタルコンピュータ・エンベデッドプロダクト事業部の山田敏行事業部長兼開発センター長が就任した。実行委員長として初のET開催を前に、「今まさにものづくりが変化している様を感じて欲しい」という山田委員長(写真)に、今年のETの見どころを聞いた。
―市場の厳しさが続く中でETを迎えることになりましたが。
山田 まず、今年のETを語る前に、組込みの世界が置かれている現状を整理したいと思います。組込みシステム開発の世界では、完成品の高機能化、短納期化、価格の下落、コストカットという様々な要因から、開発を効率化する必要に迫られており、プラットフォーム開発が進んでいます。そうなると、今までのような「デザイン」から、既存のものを組み合わせる「インテグレーション」の技術や基盤が求められる訳です。完成した組込み製品は、複数の入り組んだ技術が使用されたものになります。
―
そこで注目を集めているのが・・・
山田 グーグルのアンドロイドという訳です。オープンソースということで、各社が飛びついた。来年発売される携帯電話端末は、それ以降も使われるかどうかは別として、まずアンドロイドベースのものが一番多いでしょう。そのため、現在アンドロイドで各メーカーの内部で開発を行っているところです。それでも、まだ出てきたばかりの技術ですから、情報も技術者も足りない状態です。
―そのほかには。
山田 効率的な開発を行う一方で、組込みシステムは品質を確保しなければならない。エレベーター、プラント、医療、自動車然りです。これまでハードで実現してきた安全面を、今はソフトで実施しなければならなくなりました。そのために、効率化と同時に当然品質を確保していく必要があります。また、技術は進化し、エコの追い風を受けてマルチコアプロセッサーがいよいよ普及します。
―技術の進化は歓迎すべきではないでしょうか。
山田 そのように新しい技術動向に目を奪われがちですが、それ以上に重要なのが、安全・品質を確保しつつ、複数ベンダーのソフトやハードのテクノロジーで作られた、複雑なシステムをいかに問題なく開発していけるかということです。それが、上流でのしっかりとした設計と、ブラックボックス化された組込みシステムのどこにバグがあるのかを可視化する検証・テスト技術という訳です。この領域には、ツールの利用が欠かせません。ETでは新設の設計・検証トラックや、各社のブースで最新技術を紹介していきます。
―まさにものづくりの手法に変化が生れていますね。
山田 アンドロイドのようなプラットフォームに、オープン仕様の部品を載せて組み上げ式で開発することで、ソフト開発の大規模化やコスト問題、短納期化に対応し、システムを組み上げた最後の段階でツールを使ってしっかりとしたテストを行い、安全性を検証する、そのような開発手法に対応するための技術要素が今年のETの注目テーマといえるでしょう。
―最後にメッセージをお願いします。
山田 景気が悪いときには、人は知恵を搾り出すものです。これまでのETは、エンジニアが今後を見据えて最新動向を体感に来るという側面がありましたが、今年のETの会場では、今まさに必要な、リアルな課題が見つけられるはずです。技術者だけでなく、マーケティングや経営者にとっても重要な意味を持つでしょう。
関連サイト
Embedded Technology 2009 公式サイト