どうなる医療分野のIT化
第10回 (08/3/31)
1患者1カルテの実現を推進
中堅・中小の病院を支援するサービス基盤として、新たな国レベルの電子カルテ管理システムが稼働しようとしている。その活動母体となっているのがNPOの日本医療ネットワーク協会(JMNA、理事長=吉原博幸京都大学教授)だ。「患者のカルテ情報を一元管理することで広域の連携医療情報基盤が誕生する」という。
XMLでデータ共有へ
地域医療を高度化するには「データによるカルテの共有化」とそれを有効活用する「ナショナルレベルでのデータの所在管理」の構築が欠かせない。電子カルテシステムについては同協会を中心に、この2点をクリアする取組みが推進されている。
同協会では「カルテの共通化にはXMLをベースにすることで誰もが利用できる形態が生まれる」との発想から、2000年に共通データ規格「MML(メディカル・マークアップ・ランゲージ)」を策定した。現在は国際規格であるHL7V3CDARel.1に準拠したMML3.0を発表し、データの標準化が整った。
もう1つの課題であるデータの所在管理には大きな構想が動いている。地域連携医療のためのデータセンター「地域医療情報センター」(ドルフィン・プロジェクト)の稼働だ。データセンターにカルテデータベースを構築し、診療機関が患者のカルテをアップロードする。これにより患者の1地域1カルテを実現させた。
現在は宮崎の「はにわネット」、熊本の「ひご・メド」、東京の「HOTプロジェクト」、京都の「まいこネット」と広がってきた。ところが「センター1カ所の管轄のため、患者が移転すると他地域にわたって1カルテに統合できない状況が生まれた」という。
全国レベルで一元管理
そこで同協会は、地域医療情報センターを結ぶ国レベルの「スーパー・ドルフィン」構想を立ち上げた。地域医療情報センターには地域の病院やクリニック、検査センター、薬局、患者がアクセスする。こうした地域センターが全国に誕生した時に、その上位レベルで患者個人のディレクトリーを一元管理するスーパードルフィンを位置付けた。「これで全国どこに患者がいても1つのカルテ情報が参照できるようになる」という。
今後の拡大には大きな課題が横たわっている。「大規模病院しかまだ利用できていない」ことだ。ただし、カルテデータはインターネットを通して地域医療情報センターにアクセスすることで参照できるので、中堅・中小の病院や個人医院でも近い将来に利用可能になるはずだ。
(第10回終了)
第11回 「CIOの存在が欠かせない状況に」に続く