どうなる医療分野のIT化

第3回 (08/2/26)

用語やコードの標準化が進む

 医療関連の情報化が進み、国民が住み慣れた地域や家庭で安心して医療サービスを受けることができる環境の創出―。これが厚生労働省の「医療・健康・介護・福祉分野の情報化グランドデザイン」の骨子でもある。
  そのためには全国の医療施設で患者の情報を共有でき、医師や看護師同士が情報を交換できる基盤システムの構築が欠かせない。その第一歩として、各医局や病院ごとに構築している異なるシステム同士が同一の“言葉”を使うことが前提となる。つまり、用語やデータの標準化という問題をクリアすることが重要になる。
  この標準化作業を実施しているのがだ。電子カルテなど地域医療・広域医療の推進基盤となる標準的な医療用語やコード体系について標準化事業および標準マスターの開発などを手掛けている。

 2万超える病名マスター

 同団体が標準化とマスター作りに取り組んでいるのは、「病名」「手術処置」「臨床検査」「画像検査」「医薬品」「医療機器」「症状所見」「看護用語」「歯科」というところだ。03年度までに、病名、手術処置、医薬品、医療材料のデータベースを構築、「臨床検査や歯科分野、症状所見など9マスターを開発、運用している」とMEDIC-DCの遠藤明専務理事はいう。
  病名には、「ICD10(国際疾病分類第10版)や病名マスターに対応した2万件を超える項目が収録されている」までになった。また、医療機器では46万件、医療品は2万件の種類が網羅されている。「病名や検査、医療品などのデータが統一されればレセプトなどでも大変なコスト削減が可能になる」と見ている。
  ところが、検査などは病院が検査会社に外注に出すことが多く、そこでは機器やコンピューターはベンダーの提供するものが多い。これをもとに患者を診断して治療するため、「なかなかデータ連携が進まないのが実情」という。そこで両者に標準マスターを利用してもらえばいいわけだ。

 医療の安全考えIT化

 医療の情報化は、「医療の安全という観点からITを利用できないかという要望が高まっている」という。医薬品の投与ミスなどをRFIDを活用して極力なくすといった取組みだ。「効率化という点で大きな恩恵を受けているが、医療の安全でも同様ではないか」というのだ。
  一方で、医療のIT化が進んだとしても「医師の処方に対して薬局がどんな銘柄の医薬品を処方しているかが見えない。一方で患者が本当にその医薬品を使ったかどうかなども分らない」とトレーサビリティの必要性を指摘する。また、手術は大病院で、退院後のリハビリなどは地域の病院でという形が多いわけだが、「こうした時に情報共有できる基盤システムが構築できていれば地域医療の高度化につながる」と見ている。
  医療分野のIT化が進展して院内システムが高度化するに従い、患者主導の医療を展開できる地域医療や広域医療への道は“棘の道”という気がしてくる。MEDIS-DCの取組みとその活動成果に恩恵を受けるシステムは多いはずだ。そこにITベンダーの支援が重なって初めて医療情報化のステップアップが可能になる。

(第3回終了)

財団法人医療情報システム開発センター(MEDIS-DC)

第4回 「書類の記述など課題が明らかに」に続く

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