連載 SaaSベンダーの取組みを追う

第1回

序章 SaaS基盤が乱立、大手企業の進出が相次ぐ

 3月31日に、経済産業省が旗振り役を務めて進めてきた中小企業向けのSaaSプラットフォーム「J―SaaS」がスタートした。初日から1万以上のアクセスがあったということで、まだ正式な数字は明らかにされていないが、まずは好調なスタートを切ったといえる。
SaaSは、数年前にセールスフォース・ドットコム(SFDC)の躍進により注目を集め始めたが、先駆者ともいえるSFDCは、いち早く「SaaS基盤」という概念を掲げ、同社のアプリケーションであるCRM以外のアプリケーションを持つベンダーや、自社のアプリケーションをSaaS利用したいユーザーなどに門戸を開いた。
大規模システム開発や運用を中心としたビジネスモデルを持つ国内の大手ベンダーにとって、開発工数がかからずコストを抑えた従量課金制をとるSaaSのビジネスモデルは相反するものであり、参入するのは困難と思われた。
 しかし日本では、大手メーカーや通信事業者などIT業界の既存の主要プレーヤーが、特定企業向けにITリソースをデータセンターからSaaS形式で提供するプライベート・クラウドや、データセンターをベースにパートナーにSaaS基盤を提供するPaaSという形で参入した。
その結果現在では、いくつものSaaSプラットフォームが乱立するという独特のクラウド市場を形成することとなった。
 今後、複数のプラットフォームが生き残っていくだけの膨大なSaaS需要が発生するかは不明だが、SaaSプラットフォームが生き残っていくためには、どれだけのアプリケーションを自社の基盤に抱え込めるか、そしてどのような付加価値を提供できるかが大きなポイントとなってくる。 

 本連載では、SaaSプラットフォームベンダー各社の取組みを追っていく。

日本情報産業新聞2009年5月18日号

関連リンク

J−SaaS

セールスフォース・ドットコム

 

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