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どうなる医療分野のIT化

第12回・最終回 (08/3/31)

広域な地域医療の実現に第一歩

  医療のIT化を支援するITサービス会社は、パッケージやシステム構築が主なサービス提供内容となる。部分最適でIT化が進んできた大病院などは、新たにシステム構築する分野は少なく、オーダリングシステムや電子カルテなどの全施設を横断するシステムを中核にしたシステム統合がポイントになっている。

 マルチベンダーの強み

 ITサービス会社の立場から総合的なシステム構築支援を提供しているキーウェアソリューションズでは、30年にわたるノウハウとパッケージソフトを持つ。「本格的なビジネス展開は今年度から開始した」とITソリューション事業本部医療事業部の青木穣事業部長はいう。
  現在の病院のIT化は「大病院は単独で構築されたシステムの連携が中心になっている」段階にきている。つまり、それぞれのシステム化は済み、政府や厚生労働省の政策を反映した“システム連携”“データ連携”に向かっていることになる。これが広域地域医療につながっていく。
  システム連携で威力を発揮するのはマルチベンダー対応が得意のキーウェアソリューションズのような独立系SIベンダーだ。東京都内のある病院に同社の臨床検査システム「Medlas(メドラス)」を導入したが、「メインフレームの旧システムとのデータ検証が大変だった」という。
  一方で、病院のIT化を推進するには「CIOのような調整役がどうしても必要になる」というのは、同事業部の藤林敬三システム部長だ。ユーザーの要望に対してどの程度のIT化がどの程度の予算で可能かなどは、「医療現場を知るITベンダー担当者と病院のCIOがきっちり方向性を持たせて構築しないと後々苦労する」ことになる。

 期待されるSaaS

 今後の地域医療情報システムの進展のカギを握っているのが大型病院の下に連なる数多い中堅・中小の病院や地域の診療所などだ。しかし、潤沢なIT予算を確保できないところが取り残されるのでは国民のための高度医療は期待できない。
  解決策として考えられるのは、例えば大病院でブラッシュアップされた各種のシステムを中堅・中小病院に合せて機能を絞り低価格で導入する手がある。または「ASPやSaaSという小規模病院に合ったサービス形態を利用することになる」という。この場合は個人情報保護や情報漏えい対策がしっかりしていることが前提になるために法整備などクリアするハードルは多そうだ。
  昨年3月に厚労省が初めて医療分野のIT化を明確にしたグランドデザインを策定して1年が過ぎようとしている。電子カルテの導入やレセプト電算処理のオンライン化、オーダリングシステムの導入などが進むと同時に、ITを活用した医療の実現に向けた動きが活発になりつつある。
  そのためには医療機関とITベンダー、そして医療を取り巻く各種団体が法整備などの圧力団体となるなど2人3脚で取り組む必要がある。それぞれの思惑はあるだろうが長い目で見れば大きなリターンが返ってくるはずだ。誰もが利便性を享受できる医療基盤をITが担うことになればグランドデザインの役割も成功といえるのではないだろうか。
           (おわり)


(第12回終了)

 

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