キヤノンが現実とCGを融合させるMR技術を開発
12 6/25
キヤノンは、現実世界の映像とCGを融合させるMR(ミックスド・リアリティ=複合現実感)システムを開発した。製品を設計する段階で、動きの変化に瞬時に対応する実寸大の3次元CGを用いて製品デザインや評価が行えるため、開発コストや環境負荷を削減できる。製品の設計のほかに、工場内の設備の配置や住宅の内装のシミュレーションに利用でき、将来的には外科手術のシミュレーションへの展開も検討している。製品の販売は、キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)グループのキヤノンITソリューションズが主体となって行う。
MRは、現実世界とCGをリアルタイムに違和感なく融合させる映像情報処理技術で、スマートフォン向けのアプリで注目されたAR(オーギュメンテッド・リアリティ=拡張現実)技術もMRの一種となる。
キヤノンは、カメラや複合機の開発で培った画像処理技術をもとに、高精度かつ高速なマーカー検出手法を開発し、使う人の視点にリアルタイムに追従する安定した位置合せを実現した。これにより、ユーザーの任意の視点から実寸大のCG画像を体感できる。
利用者はヘッドマウントディスプレー(HMD)を装着し、HMDに内蔵された左右一対のビデオカメラによって現実世界を撮影する。映像はパソコンに送信され、その際に画像処理や位置・姿勢センサーなどの位置合せ技術により、パソコン内でCGと現実世界の映像を融合する。融合した映像がHMDに搭載された小型表示ディスプレーに表示され、表示された映像を工学システムで拡大することで、利用者は臨場感のある立体映像を見ることができる。
標準の製品構成は、HMD、基盤ソフト、PC、PC用ディスプレー、トラッキング用センサー、ディスプレー分配器などで、SDKの提供によりMRアプリ開発も容易に行える。
キヤノンや他の製造業ですでにテスト導入実績がある。キヤノンITソリューションズが用途に応じてMRシステムをカスタマイズして提供する。HMDを装着した状態で、マウス操作で目の前のCGを動かすといったシステムを開発できる。価格は、標準の製品構成でSI込みで1千万円程度。