国産スーパーコンピューター「京」が世界最速を達成

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 文部科学省のプロジェクトとして理化学研究所(理研)と富士通が共同で開発している国産スーパーコンピューター(スパコン)の「京(けい)」が、スパコンの性能評価ランキング「TOP500リスト」において、演算性能8..162ペタFLOPSで1位を獲得した。京は、2012年6月の完成を目指して現在整備途中の段階だが、現時点で2位の中国製スパコンに大差をつけた。日本のスパコンがTOP500で1位を獲得するのは2004年のNEC製「地球シミュレータ」以来となる。事業仕分けに端を発する「1位」をめぐる一連の流れに答えを出した形だ。

 今回世界最速となった京のシステム構成は、672きょう体でCPU数が68544個。完成時と比較して約8割程度だが、TOP500において指標とされているLINPACKベンチマークで性能8.162ペタFLOPSを記録した。
実行性能も「ランキングに登場している他のスパコンと比較しても優れた数値」(富士通井上愛一郎常務理事)となる93.0%を記録し、ベンチマーク用の演算性能だけを追いかけた結果ではないことも証明した。
  一時は政権交代に伴う事業仕分けで事業が凍結しかけ、NECや日立製作所が予算の問題からプロジェクトから撤退するなど幾度となく危機に瀕したが、今回世界1位の称号を獲得して日本の技術力を証明すると同時に、面目も保った。
  理研の野依良治理事長は、「いろいろなことがあったが率直に喜びたい。日本の力を結集してここまで来られた。今後は京を科学技術立国、日本復興の原動力にしたい」とコメントしている。京の完成後は、気象予測や地震・津波影響予測などの減災、太陽光発電向け開発、ものづくりなどに利用される予定だ。
プロジェクトに最後まで参加した富士通は、「今回のプロジェクトには1千人単位が携わっている」(間塚道義会長)状態で、負担が大きかった分、今後はスパコンの販売や、京で利用されている汎用CPUの「SPARK64[fx」、スパコン間をつなぐインターコネクト技術、ミドルウェアなどで、HPC分野のビジネスを拡大していく考えだ。

     ランキングをみると、5位にも日本の東京工業大学の「TSUBAME(つばめ)2.0」が入り、ここ数年間低迷していた日本のスパコン開発が復活したようにみえる。ただし、今後米国のDARPA(国防高等研究計画局)などが10ペタFLOPSを越えるスパコン開発を進めており、仮に京が完成した来年のタイミングでTOP500に登録しても1位を獲得できたかは微妙という状況で、今後も国家間でのし烈な競争が続く。

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