東京理科大などが解読不能な新暗号方式を開発

11 12/12

 東京理科大学理工学部情報科学科の大矢雅則教授の研究チームは、イタリアのローマU大学と共同で、独自の暗号方式を開発した。既存の公開鍵暗号方式と比べて1万倍高速で、安全性に関しては「暗号の解を見つけることが数学的にゼロであることが証明できる」(大矢教授)といい、「現状よりも低コストでの暗号化が可能になる」としている。暗号化しても動画が切れないストリーミング方式によるテレビ会議システムやモバイルシステム、自動車に搭載されているキーレスエントリーシステム(イモビライザー)などへの適用が見込める。

 今回大矢教授の研究チームは、まず数学の分野で非可換確率論を使って乱数を発生する数学を開発した。これを応用し、ローマU大学と共同で疑似乱数発生アルゴリズムの発生装置(PRNG)を開発、公開鍵暗号方式のDH型暗号に適用して、安全かつ高速な新暗号方式を開発した。
 開発したPRNGは、「数学的に暗号の解をつける確率がゼロになることが証明される」というもので、通常の暗号で使われている疑似乱数生成アルゴリズムがこれまでクリアできなかった米国の評価テスト「U01」を、初めてクリアした性能を持つ。
 市場で一般的に利用されている暗号方式はRSA型の公開鍵暗号方式で、桁数が大きい数の素因数分解の困難さが安全性の根拠となっている。今は1024ビットや2048ビットの鍵長が利用されているが、原理的にはいずれ解読される宿命にあるうえ、鍵長が長くなると処理速度も遅くなる。
 このほかにも次世代暗号方式として量子暗号方式が注目されているが、実用化はまだ先と見られている。
新暗号方式は、安全の強度を同じにした場合RSA暗号方式の1万倍以上の速度を達成し、「聖書1冊すべての暗号化を1秒で行える」という。テレビ会議などのマルチメディアファイルを暗号化しても動画が切れることなく再生できるほか、軽量で動作するため、モバイルシステムへも実装しやすい。
 大矢教授らは、テレビ会議システムや自動車のイモビライザー、ハードディスクドライブの暗号化などのソフトを試作しており、そのほかにもタイムスタンプやクラウドサービスのセキュリティに利用できるとしている。
 来年以降、展示会などでこれらのソフトのデモを行い、実用化に向けて技術をアピールする。すでにイタリアでは、「軍や金融機関が導入を視野に検証を行っている」という。

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