三菱電機と北大が量子暗号システムの新技術を開発

07 1/22

 三菱電機と北海道大学は、量子暗号システムにおいて単一光子源を組み込んだ高精度の量子暗号通信装置を共同開発、このほど世界最長となる80キロメートルの原理検証実験に成功した。量子暗号で盗聴の原因となる2光子発生確率を初めて1万分の1以下まで抑えた新たな「単一光子源」技術を北大が開発し、三菱電機が開発済みの量子暗号システムに取り入れたもの。また、漏えい情報を定量的に見積る方法も開発し、80キロメートルの安全で安定的な通信を確認した。今後は装置の小型化や高速化に取組み、5年後をめどに単一光子源の量子暗号通信装置の実用化を目指すとしている。

 従来の量子暗号システムは、米マジックテクノロジーズ社が開発した単一光子源による連続光駆動型と、三菱電機の微弱レーザー光源によるパルス駆動方式がある。
 マジック社の技術は、光子の生成は1個ずつの単一光子源だが、2光子発生確率が不明なことと光子源の規則性がランダムであるということが分かっている。
 一方の三菱電機の技術は、「擬似単一光子源」として用いられている微弱なパルスレーザー光源は、複数個の光子が同一時刻に発生する確率を無視できず、そのうちの1個を取り出されても盗聴を検知できずに暗号を解読される恐れがあった。
 そこで北大は、光の電磁場と比例しない「非線形光学効果」を利用した単一光子源を開発し、2個以上の発生確率を1万分の1以下という精度を達成した。また、光源には規則性があり、距離の延長を可能とする接続性も備えている。
 三菱電機は、微弱パルスレーザー光源を利用した従来のシステムに北大の技術を組み込み、高精度な量子暗号通信装置を開発した。これにより単一光子源を実装した量子暗号システムが実現したもの。
 実証実験にはこれまで不可能だった量子暗号の定量的評価を可能にするため、光子生成プロセスまで踏み込んだ漏えい情報の定量的見積り方法を開発した。この評価方法により80キロメートルにおよぶ長距離通信が安心・安全に実施できたことを証明している。
 今後は、開発した技術をベースに装置の小型化と通信の高速化を進めていき、5年後にはネットワークの安心・安全な利用の実現に向けた新技術として、単一光子源を用いた量子暗号通信装置の実用化を目指す。

三菱電機 http://www.mitsubishielectric.co.jp/
北海道大学 http://www.hokudai.ac.jp/