次世代国産スーパーコンピューター開発計画が見直しに
09 5/25世界最高性能を目指し、文部科学省主導で進めている次世代国産スーパーコンピューターの開発計画が見直しになった。これまで理化学研究所(理研)が中心となり富士通とNEC、日立製作所の3社が共同で開発していたが、おりからの世界不況を受けて経営状態が悪化したNECがプロジェクトから退くことを表明、それに伴ってNECとの直接契約で同プロジェクトに参加していた日立製作所も、撤退することとなった。一方で残った富士通は、世界最速となるCPU「SPARC64[fx」を開発し、世界最速スパコンの開発に明るい話題を提供した。
同計画は2006年に、「最先端・高性能汎用スーパーコンピュータ・プロジェクト」として開始され、2012年度の完成を目指している。2007年にシステム構成を決定し、富士通、NEC、日立の国産大手コンピューターメーカー3社が協力して詳細設計フェーズを終了し、計画ではこれから製造フェーズへと移行する段階に差し掛かっていた。
プロジェクトは、ベクトル型、スカラー型の2種類の方式からなる複合型システムを開発するという計画を策定していた。NECは、かつてベンチマークテストで世界最速を記録した「地球シミュレーター」で採用しているベクトル部分を担当していたが、製造フェーズでの開発投資が大きくかさむため、製造フェーズの計画には参加しないことを決めた。
日立はベクトル部の開発にNECとの共同プロジェクトという形で参加し、契約もNECと直接行っていたため、製造プロジェクトへは参加できなくなった。
これにより、理研はシステム構成の見直しを余儀なくされたため、これまでの成果をもとに現在新しいシステム構成を再検討している。新しいシステムでも構想通り、2012年までに実行性能10ペタFLOPS級のスパコンは開発可能としているが、新しいスパコンは、複合型ではなく富士通が担当している部分を生かしたスカラー型のシステムとなる見通しだ。
図らずも最後のとりでとなった形の富士通は、演算処理速度128ギガFLOPSと、現時点で世界最速を誇るスパコン用のCPU「SPARC64[fx」を開発し、先日開催したプライベートイベントの富士通フォーラムで試作品を発表している。同社は、プロジェクト参加を継続するため、同CPUが新しいスパコンに搭載される見込みだ。
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