政府がデジタル社会に向けた新戦略を公開
09 6/15政府のIT戦略本部は、2015年を見据えたデジタル社会の将来ビジョンとして、「デジタル新時代への戦略」を公開した。2015年には、少子高齢化社会の加速化により、生産性や所得の低下、国内市場の衰退、社会の減退といった問題が想定される。そこで、デジタル技術を活用することで、高品質で無駄のない「デジタル高度社会」、国民や企業、地域社会などが元気になる「デジタル成長社会」という2つの新しい社会経済モデルを目指し、2015年に直面している構造的な課題を克服する考えで、具体的には電子私書箱構想や電子カルテの推進などが盛り込まれている。
IT戦略本部は、同戦略の策定にあたり、2001年の「e―ジャパン戦略」に端を発するこれまでのデジタル化戦略は、デジタル技術の利活用を強調しつつも技術優先指向で、サービス供給者側の目線で物事が運んでいたと振り返っている。
例えば、電子自治体の分野では、IT化は進んだものの、電子化を享受するためには機器の購入や登録のために自治体へ出向かねばならないなどの不便さからサービスの利用率が低調となっている問題がある。
これに対し2015年に「デジタル高度社会」と「デジタル成長社会」を実現するためには、安全で使いやすいデジタル技術の開発や、デジタル化のために障壁となる制度や慣行、業務プロセスの見直しなど、国民や利用者側の視点を意識する必要があるとの考えから、同戦略の中に目標と実現のための方策を示した。
戦略の柱は、「電子政府・電子自治体」「医療・健康」「教育・人財」の重点3分野、産業・地域の活性化および新産業の育成、デジタル基盤の整備の3項目となっている。
なかでも注目されるのが、国民にユニークIDを発行してオンライン行政サービスを提供する「国民電子私書箱」構想だ。かつては「国民総背番号制」という印象の悪いネーミングで立ち消えとなったが、年金未払い問題を経た現在、必要性に対する理解は得やすくなっており、実現すれば家やコンビニエンスストアで24時間必要な行政書類が取り出せるなどのサービスが可能になる。
今年度中に住基カードとのIDの統一や、医療分野において個人の医療電子記録である「日本版EHR」で利用が検討されている「社会保障カード」構想との一体化、運用方法などの基本構想を取りまとめる考えだ。
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