経産省が人月単価の脱却に向けて報告書を公表
08 5/12
経済産業省は、ITサービス業界で通例となっている受注単価決定方法「人月工数単価」からの脱却を図るため、システムの付加価値から価格を決定する「パフォーマンスベース契約(PBC)」に関する報告書「情報システムのパフォーマンスベース契約に関する研究」を公表した。業界の健全な発展のためには、ユーザーとベンダー間の認識共有化と真のパートナーシップが欠かせず、PBCによって正当な価格体系の実現が期待される。同省が推進するモデル取引・契約書の整備の一環としてPBCによる取引の可視化を促進することになる。
パフォーマンスベースの価格設定、契約(PBC)は、サービスやシステムの対価の一部または全部について、サービスやシステムによって創出されるパフォーマンスに基づいた価格設定をした契約を指す。つまり、サービスやシステムが生み出す価値を価格に換算する=価値への対価ということになる。
ところが現在はほとんどの案件で採用している人月単価は、システムを構築するために要した労働量によって対価が決められていくモノへの対価であるため、ユーザーがほしい機能に対する正しい価格設定が難しい状況にある。
報告書では、サービスにおけるPBCを@システム開発や運用の価値をベースとなるインプット型Aサービスやシステムによる業務改善などのオペレーション価値をベースとしたアウトプット型B事業目的や成果をベースとしたアウトカム型―の3つに分類した。
また、取引形態として「委託/請負開発」「ライセンス」「サービス」「ITアウトソーシング」「BPO」の5モデルに整理するとともに、契約形態として「企画・要件定義」「外部設計書作成」「ソフト開発」「運用準備・移行支援」「運用」「保守」の6カテゴリーに分類して19の契約形態を定め、それぞれの説明を行っている。
こうしたPBCをビジネスとして顕在化するには、「PBC実施のための環境整備が必要になる」ことから、適用領域や実施プロセス、ガイドラインの整備、法律上の対応を上での整理したモデル契約書の整備などの必要性を指摘した。
海外ではPBC適用の効果が表れている事例も少なくいことと、国内でも広がる機運があることからPBCの認知を促す情報発信などを展開する考えを示した。業界が発展するには技術とシステムが生み出す付加価値への対価が欠かせないことから、今後の動きが注目される。
経済産業省 「情報システムのパフォーマンスベース契約に関する研究」報告書