NIIと工学院大、撮影によるプライバシー侵害に新技術

12 12/17

 国立情報学研究所(NII)は、工学院大学と共同で人間とデバイスの感度の違いを利用して、盗撮やカメラの写り込みによるプライバシー侵害を、撮影される人の側から防止する新技術を開発した。人の視覚に影響を与えず、カメラへのみ影響を与える近赤外線光源装置を配置したゴーグルを装着することで、既存のカメラに特別な機能を加えなくても、撮影時にカメラ側での顔認識を失敗させることができる。同技術により、無断で撮影された画像によりプライバシー情報がインターネットにさらされるという被害を防ぐことができる。

 現在、GPSおよび高機能カメラ付きのスマートフォンや画像検索技術の進化、気軽に情報を公開できるプラットフォームとしてのSNSの普及により、気付かないうちに顔画像や行動履歴といった個人のプライバシー情報が、無断でインターネット空間にさらされているという被害が増えている。
 例え意図せずに撮影されたものであっても、撮影情報とともにSNSに公開されることで、プライバシーが露見する可能性は高まる。カーネギーメロン大学が行った実験によると、約3割近くがフェースブック上の公開情報をもとに氏名を特定され、被験者の趣味や社会保障番号の一部が判明してしまうケースもあったとしている。
 さらに、欧州連合(EU)では、SNSの米フェースブック社に対して、欧州ユーザー向けのサービスにおいてフェースブックが搭載している顔認識技術を無効化するように要請し、無効化にいたるなど、プライバシーの保護が大きな問題となっている。
 今回NIIと工学院大学が開発した技術は、人間の視覚と撮影するデバイスが認識する光感度の特性の違いを利用しており、装着したゴーグルから可視光領域の外にある近赤外線を発することによってカメラの認識機能を麻痺させる仕組みとなっている。
 現在多くのデジタルカメラには顔検出機能が搭載されており、フェースブックやグーグルPicasaなどには、辞書などを参照して誰であるかを特定する顔検出技術が搭載されている。カメラの前処理工程での顔検出を誤判定させ、その結果、特定の人物の顔認識も防止できる仕組みとなっている。

  そういった背景のなか、今回NIIと工学院大学は、被写体側で行えるプライバシー侵害防止の仕組みを開発した。市販のゴーグルに11個の近赤外線LEDを取り付けたバイザーによって実証実験を行い、成功したとしている。カメラで撮影した映像には、ゴーグルが発している近赤外線の部分が、ノイズとして記録されている。

 

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