過労死等防止白書をふまえて

16 10/17

 厚生労働省が、初の「過労死等防止白書」を公表した。2014年に過労死等防止対策推進法が施行され、昨年12月にはストレスチェック制度開始と、労働者を保護するためのルールが整備されつつある。
  白書によると、1カ月の時間外労働時間が最も長かった月で、過労死リスクのラインとされる80時間超と回答した企業(業種:大分類)の割合が最も高かったのが情報通信業だった。また1つ改善すべき問題点が浮き彫りにされた形だ。「所定外労働が必要となる理由」で、情報通信業は「業務量が多い」「顧客(消費者)からの不規則な要望に対応する必要がある」「顧客(消費者)が提示する納期・期間が短い」「労働生産性が低い」で1位だった。ユーザーや元請けに無茶を言われ、人月ビジネスで生産性も低いという構図が、全業種調査からも裏付けられている。
  ユーザーに理由の一端があるのは確かだが、世界同時不況後に単価が抑えられ、業界の経営者からは「売上げが」という嘆きは聞いたが、「技術者が疲弊して」という話はさほど聞かなかった。まず、経営者や業界団体は、ユーザーに対して自社や業界の技術者を守るような盾となり得ていたか考える必要がある。
  白書を受け、恐らく情報サービス業にも是正勧告的なものがあるだろう。そこで逆に、ユーザーや国に対して白書のデータをもとに「技術者が過労死する」と訴えかけをすべきだ。是正・改善勧告、残業減らせだけで問題は解決しない。リスクをユーザーと共有する仕組み、高齢者雇用の適性賃金の検討、技術者のモチベーションや生産性の向上といった諸問題と併せて改善していくべきだ。そもそもの部分に、労働者の“今の環境”を守ることに躍起となっている日本雇用システムの問題があるが、労働基準局案件となる解雇や指導の判断を、白書のビッグデータとAIを活用して行えるような仕組みで改善提案してみてはどうか。(I)