IT戦略本部が地域医療の実現に試案

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 医療関連のIT化向上に、医療情報ネットワークの構築につながる「生涯健康医療電子記録(EHR=エレクトロニックヘルスレコード)」の実現に向けた長期計画への試案が公表された。IT戦略本部の医療評価委員会が明らかにしたもので、医療情報化の進展が必ずしも予想通りに進んでいないこともあり、関係省庁の取組みを明確にするとともに、医療IT化の長期的目標の方向性を明らかにした。政府のIT新改革戦略には、医療のIT化について目標があげられているが、同委員会では長期的な視野に立ったグランドデザインの策定を進めていく。
 
 EHRは、電子カルテなど医療情報のネットワーク化を指し、患者中心の総合医療体制を目指す。日本では院内の電子カルテ化が進んでいるが、欧米では院内情報化よりもネットワーク化が前提となるEHRへの取組みが重要視されており、今回の試案ではそこに向かう提案がなされている。
 医療評価委員会は昨年8月から審議を開始、今回の試案は12月に開催された第5回目の会合で提出された。評価については来年度の「重点計画―2007」につながる内容になる予定で、課題や施策の進ちょくなどを明確にしていく。今回は日本版EHRを実現することを最終目標としていることから、10年から15年をかけた長期的目標を定めていく考えだ。
 試案では、実現への戦略として健康医療情報の電子化や地域医療情報の構築、国民的健康医療IT化・日本版EHRの構築を掲げた。また、実現方法として、健康医療政策との連携や地域医療阻害要因の除去をねらう。そのためには、自治体が自主性を持って地域医療計画を策定することや、地域情報システムとセキュリティを統合した新たな地域医療連携システムの構築などを提案した。
 経済産業省が明らかにした医療情報化施策の概要によると、医療情報システムにおける相互運用性の実証事業を07年度実施し、地域医療情報連携システムの標準化および実証事業を今年度から08年度まで実施する。システムの標準化により、疾患別に病院間の相互運用性を確保し、地域医療を高度化させることを目標にしている。
 医療情報化はこれまでも様々な推進策が講じられてきたが、今回の試案により、住民密着型の地域医療のあり方が明確にされつつあるようだ。


高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部) http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/