ワコムが手書き入力の標準仕様を公開

14 3/10号

 ワコムは、タッチペンなどで入力した手書きのデジタルデータや画像をOSやハード、アプリケーションの枠を超えて活用できるようにするためのオープンフレームワーク「WILL(ワコム・インク・レイヤー・ランゲージ)」を、世界的なモバイルの祭典である「モバイル・ワールド・コングレス(MWC)」で発表した。同社がデジタルペンで培ったノウハウをもとに開発したもので、WILLを実装するためのSDKも無償で提供する。OSやデバイス、ソフトを提供するベンダーは自社製品を変更することなく、手書きのデジタルデータに互換性を持たせることができる。
 
 デジタル環境が変化し、市場ではパソコンのようなキーボードを持たないスマートフォンやタブレットが普及した。それらの多くは、メモやスケッチ、手書き入力に対応しており、インターフェースの変化によって実際に手書き入力が利用される局面も増えている。
 ただし、現状ではそれぞれで作成したデジタルインクに互換性がなく、再現性という部分では、アンドロイドやMac、マイクロソフトやアドビといったOSやソフトベンダーの環境内でしかファイルをやり取りできない状況にある。
 ファイルを再生できても、デジタルペンによる筆圧やイラストを再現するのは難しく、ユーザーはワードやエクセル、フォトショップを使うような感覚で、手書きファイルの共有や編集は行えない。
 そのためワコムは、自社のノウハウもとに、オープン仕様のWILLを開発し、世界に公開した。ソフトベンダーやハードベンダー、さらに現在はタッチペンを利用していないサービスを提供するベンダーが、自社商品にWILLを組み込むためのSDKも提供する。業界に互換性の確保を働きかけて、手書き入力の市場自体の拡大を図る。
 WILLによってデータを標準化することで、手書きの筆跡データをネットワークを通じてストリーミング送信し、複数のメンバーが参加した会議などでリアルタイムにファイルを共有し、各人が編集することも可能となる。
 さらに、インクデータに「メタデータ」を組み合せることで、筆跡データを活用したセキュリティー管理や注文書へのサインといったビジネスでの活用も行え、利用の幅が大きく広がる。

 

 ワコムは、互換性を持った標準仕様を普及させることにより市場を拡大し、ワコムは既存のデザイナーを中心とする特定領域向けのサービスから、「デジタル文房具」として広く多くのユーザーへのアプローチを図る。

 

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