富士通研究所が人物を追跡する画像センシング技術を開発
08 5/19
富士通研究所は、多数の小型カメラを天井などに配置して室内にいる人物を漏れなく追跡する画像センシング技術を開発した。従来は人の影に人物が隠れると死角が発生して正確に把握することが難しかったが、同研究所は複数のカメラで撮影することで人物を特定して死角をなくす技術を業界で初めて開発した。これにより、入退室管理などセキュリティ対策だけでなく、定点観測による動線データが取得できることからマーケティングや作業の可視化による業務分析など様々な応用分野が広がることになる。今年度中には入退室管理システムの開発を目指す。
今回開発した技術は、天井から多数のカメラを真下に向けて設置し、人物の行動を死角なく把握できるようにしたもの。これにより、動いている人物の動線を自動的に把握でき、不審な行動の監視や購買行動の観察などが可能になる。
コンビニや量販店、デパートなどでは従来、監視視野を広げるために斜め下に向けてカメラを設置しており、人が人に重なったり展示物の影になった場合に来店者をすべて追跡することは不可能で、正確な把握や動線の抽出ができなかった。
新技術では、映っている人の大きさや形をもとに同一人物であるかを検証するので、映像中の人物を重複なく正確に検出・追跡することですべての人の動線を抽出することができる。
同研究所が行った実証実験では、約50平方メートルの店舗を16台のカメラで撮影し、延べ243人の通過状況を100%検出した。また、映像はミドルクラスのパソコン1台で毎秒30フレームのリアルタイム処理が可能になっている。カメラの数や配置は様々な広さや形のスペースに自由に応じることができる。
こうした技術により、入退室管理システムでは認証した人と認証していない人の導線をそれぞれ把握することが可能で、認証していない人の出入りを防止することができるようになる。
また、売り場などで顧客の導線をたどることで移動経路や売り場での滞在時間などを定量化してマーケティングに生かすことが可能になる。同様の方法で工場内の作業員の動きを定量化することで業務改革への応用が可能になる。
なお、同技術を共連れ防止に応用し、手のひら静脈認証や双方向RFIDタグなどによる所在管理などと組み合せたオフィスセキュリティシステムを7月に提供する予定となっている。
富士通研究所 http://jp.fujitsu.com/group/labs/