経済産業省が情報経済革新戦略を発表

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 経済産業省の産業構造審議会情報経済分科会は、電子立国再興に向けて今後のエレクトロニクス・IT産業の進むべき姿を示した「情報経済革新戦略」を発表した。基幹産業でありながら、電機・電子製造分野ではここ数年中国や韓国に押され、ITやソフト分野では、海外製品に標準をとられている状態が続いているため、2月から3月にかけて実施した国民参加型のネット審議「経済産業省アイディアボックス」の声も反映し、「エレクトロニクス・IT産業の構造改革」「ITによるITユーザー産業の高次化」「課題解決型システムの海外展開」の3つの視点で具体的な政策を提言した。


  経産省の工業統計調査によると、2008年時点で国内のエレクトロニクス産業の従事者は106万人で、この数字は自動車産業よりも多い。このほかに、経産省の特定サービス産業実態調査によると、ITサービス産業には86万人が従事している。
  かつては半導体や家電といえば技術立国日本の得意分野であったが、今では電子・電機・ITの分野は低迷が続いている。同戦略ではこうなった理由として、「国際的視点の欠如」「内向き思考」「標準・ブラックボックス戦略の欠如」「スピード感の欠如」などを挙げている。さらに、日本は他の先進国と比較するとIT投資額が低く、利活用も進んでいないという問題もある。
  これらの要因を踏まえた構造改革案として、新興国市場をターゲットとし、新興国の成長やニーズに合せた製品戦略および販売戦略を構築することや、日本型のすり合せ開発でないモジュール開発でのコスト競争で勝利するために、グローバル人材の育成や法人実行税率の国際的水準を目指した引き下げなどを行うべきとしている。
  このほか、ITを活用した各産業の高次化を提言している。例えばクラウドコンピューティングを利用したイノベーションとして、センサーやGPSからの土壌・気象情報などを利用した農業、GPSや衛星を利用した盗難防止システムや受給予測などのものづくりへの適用、物流の高度化、中小・ベンチャーの投資リスクの低い大規模ビジネス展開の実現などが可能としている。
  日本の強みも生かしていく。新しい成長の柱を構築していくため、鉄道や電力・水道の供給などの社会インフラや環境技術などの現時点で競争力を備えている要素製品群を組み合わせ、課題解決型システム技術を創造し、輸出していく。そのため、政策面ではトップ外交や同システムのパッケージ化などが必要としている。

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